トップが語る、「いま、伝えたいこと」
この原稿を書き始めた金曜日(6月13日)の朝は143円前後で動いているようですが、為替が円高の方向に動きそうな感じがしてきました。原因はアメリカのインフレに関する諸指数が落ち着いてきたので、トランプ大統領や市場関係者にとっても待望の利下げがFRBによって行われるのではないかという観測が浮上したことにあるようです。現代の金融相場は中央銀行の意向をいかに読み取るかが大きな要因となります。だから、FRBやECB(欧州中央銀行)、それに日銀の意向をウォッチする専門家が存在することになり、例えば日銀用語というごく一部の専門家にしかわからない精妙な腹の読み合いが行われています。
株価は本命の半導体市況がAI需要で予想以上に強いことが明らかになってきて短期的には上昇傾向にあるように感じますが、日経平均で言うと円高は株価下落の要因だと一般には言われているので、目先は上がりにくい状態になっているのかもしれません。マーケットがトランプ大統領への対応は先週書きましたTACO(”Trump always chickens out”(トランプはいつもビビって退く))だと読み切ってきたこともあり、中央銀行の意向を考えながら方向性を決めるという常識的な動きが戻ってきたようにも思います。そしてその結果、アメリカのインフレ基調が収まってきてトランプ大統領が待ち望んでいた利下げの実現性が高まっているのはちょっと皮肉なようにも思います。
トランプ大統領は相互関税の旗を降ろさないと思います。ただ、100年以上前のFRBが創設される前の状態に戻そうという試みは無理があります。当時は連邦政府には税金がなく、必要なお金は関税ですべてまかなえていたのですが、経済の規模や貨幣の流通量が格段に違うので現代社会をそれで運営するのは無理ですし、一番損をするのはアメリカ国民です。クレバーなトランプ大統領はすでに学ばれているようですが、パウエル議長の解任などFRBの存在を否定する動きを見せるのは大暴落というしっぺ返しを確実に受けます。ただ、パウエル議長を来年5月の任期満了で再任しないのは明らかだと思うので、後任にまともな人が指名されるかどうかが心配です。
相場は落ち着いているので、長期投資を指向しながら投資の勉強を始めるにはいい時期だと思います。相場は必ず崩れるものだという意見もありますし、そのタイミングを見計らうのは論理を超えた直感力的な能力が必要になります。私のお金の師匠だった故・竹田和平さんはその直感力でバブルにもバブルの崩壊にもほとんど影響を受けずに株式投資で勝ち続けた人ですが、久しぶりに和平さんの本でも読んでみようかなと思っています。
今回は広島県福山市のコト暮らしが先月末にクラウド・ファンディングで費用を集めて自費出版された『ともたち』を紹介させていただきたいと思います。
歴史のある建物が並び、美しい海を一望できる、瀬戸内海沿いは非常に人気のある観光地です。今回の主役である福山の鞆の浦はそんな地域の中でも電車もなくなかなか近寄れない海沿いの街。観光や漁業関係者で埋め尽くされているのかと思いきや、若い方もいらっしゃるようで、読み進めていくと海と島の街で既存の伝統ある文化と移住者による新しい文化が融合した、鞆の浦独自のコミュニティを作り出しているのを読み取ることができます。
海沿いに住む人、船で行き来する近くの離島に住む人、地域に根ざした企業を経営する人。鞆の浦に住む様々な方を紹介している冊子ですが、ここに出てくるのは決して特別ではない、誤解を恐れずに言うならば普通の人。本当に素朴で飾らない、地域性をよく表しています。前述したように海の街ですので、冊子に載った写真に映る風景はとても美しく、特に鮮やかなそれは多くの人を惹きつける魅力的な存在であるとすぐに理解できました。
「何もない」が誇りであるという言葉が非常に印象的で、情報の波に飲まれ続ける生活を強いられる現代社会においてそれは本当に特別で価値のあるもので。その空気に触れる事が可能となる『暮らし観光』と言う言葉に魅力を感じる方は多いのではないでしょうか。とにかく距離感が近く、観光も大切ですが暮らしを尊重する様子。移住についてもサポートは充実しているようで、行政は勿論インタビューにも登場する不動産業者さんもおられます。地方への移住に興味のある方にも魅力的な選択肢の一つにもなるかもしれません。
本書は親しくしている秋山木工の秋山利輝社長から送ってもらいました。秋山社長は奈良の明日香のご出身で、明日香で自然農業をやっていらっしゃる友人の上田かおりさんをご紹介するとご縁が広がって、奥明日香で築170年の古民家を宿泊施設に改装してスローライフを提案している弥栄の中島茂弥、佳純ご夫妻とも親しくされるようになりました。日本の良さを大事にしていくことが何よりも重要だと日頃から実践している秋山社長の琴線に触れたのだと思います。
コト暮らしの長田凉・果穂夫妻は秋山木工の関係者の娘さんご夫婦になり、日本の大切さを伝えていく活動をやっていると感じられて、ご紹介してくださったのだと思います。東京や大阪で事業をして国の発展に貢献するのももちろん大事ですが、歴史を積み重ねてできた日本の良さを見直すスローライフのことを知るいい機会になりました。この場をお借りして秋山社長に御礼を申し上げたいと思います。
のんびりした原稿を書いているとイスラエルがイランを攻撃したという衝撃のニュースが飛び込んできました。日経平均は500円程度の下げになっていて原油価格が高騰しています。やっぱり平穏無事では済まないのが今年のトレンドなのかもしれません。
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2025.06.09:【いま 一番知らせたいこと 、言いたいこと】日本発のコンテンツ (※舩井勝仁執筆)
2025.06.02:【いま 一番知らせたいこと 、言いたいこと】ある日の朝の思索 (※佐野浩一執筆)


舩井 勝仁 (ふない かつひと)
![]() 1964年大阪府生まれ。1988年(株)船井総合研究所入社。1998年同社常務取締役 同社の金融部門やIT部門の子会社である船井キャピタル(株)、(株)船井情報システムズの代表取締役に就任し、コンサルティングの周辺分野の開拓に努める。 2008年「競争や策略やだましあいのない新しい社会を築く」という父・舩井幸雄の思いに共鳴し、(株)船井本社の社長に就任。「有意の人」の集合意識で「ミロクの世」を創る勉強会「にんげんクラブ」を中心に活動を続けた。(※「にんげんクラブ」の活動は2024年3月末に終了) 著書に『生き方の原理を変えよう』 |
佐野 浩一(さの こういち)![]() 株式会社51コラボレーションズ 代表取締役会長 公益財団法人舩井幸雄記念館 代表理事 ライフカラーカウンセラー認定協会 代表 1964年大阪府生まれ。関西学院大学法学部政治学科卒業後、英語教師として13年間、兵庫県の私立中高一貫校に奉職。2001年、(株)船井本社の前身である(株)船井事務所に入社し、(株)船井総合研究所に出向。舩井幸雄の直轄プロジェクトチームである会長特命室に配属。舩井幸雄がルール化した「人づくり法」の直伝を受け、人づくり研修「人財塾」として体系化し、その主幹を務め、各業界で活躍する人財を輩出した。 2003年4月、(株)本物研究所を設立、代表取締役社長に就任。商品、技術、生き方、人財育成における「本物」を研究開発し、広く啓蒙・普及活動を行う。また、2008年にはライフカラーカウンセラー認定協会を立ち上げ、2012年、(株)51 Dreams' Companyを設立し、学生向けに「人財塾」を再構成し、「幸学館カレッジ」を開校。館長をつとめる。2013年9月に(株)船井メディアの取締役社長CEOに就任した。 講演者としては、経営、人材育成、マーケティング、幸せ論、子育て、メンタルなど、多岐にわたる分野をカバーする。 著書に、『あなたにとって一番の幸せに気づく幸感力』 |
